こんにちは!ライターの井ノ口です!
今回は、「南治療院」の南舘 邦士(みなみだて くにお)さんに、開業のきっかけや施術の特徴、経営の工夫、そして今後の展望についてお話を伺いました。
開業から36年。伝統的な「あん摩」の技を守り続けながら、地域に根ざした丁寧な施術で支持を集める南舘さん。今回はその温かな想いと、長年培われた信頼の背景に迫ります。
視覚障害を乗り越えて、あん摩の道へ
井ノ口: 今の業界を目指されたきっかけを教えてください。
南舘さん: 私は先天的な視覚障害を持っておりまして、小学校のころから視力の低下が進み、視覚障害者向けの学校に進学しました。当時は視覚障害者の職業といえば、あん摩マッサージ指圧師が定番でしたから、自然とその道を選びました。兄も同じ道に進んでいて、兄弟で一緒に働くようになったんです。
兄弟での開業から地域密着の治療院へ
井ノ口: 独立に至った経緯を教えていただけますか?
南舘さん: 最初は兄の治療院で使用人として働いていましたが、結婚を機に自立を決めました。国道を挟んで東側が兄、西側が私という形で分かれ、それぞれの地域に根づいた治療院を運営しています。今の場所で36年になりますね。

幅広い年齢層と多様な症状に対応
井ノ口: どんなお客様が多く来られるのでしょうか?
南舘さん: 肩こり、腰痛、膝の痛みなどが多いですが、最近は脊柱管狭窄症の方がとても増えています。足のしびれや歩行困難などの症状ですね。また、三本木高校の陸上部の子たちなど、10代のスポーツ障害のケアも多いので、年齢層は10代から60代までと幅広いです。
特別な技術より、信頼と人柄が大事
井ノ口: お店の強みや特徴があれば教えてください。
南舘さん: 特別な技術はありませんが、「日本あん摩マッサージコンテスト」にも出場して、自分の技術の向上に努めています。また、患者さんに合わないと感じたら、専門医や他の施術者に紹介することもあります。患者さんとの信頼関係が何よりも大事だと考えています。
南舘さん: さらに、視覚障害者は点字を指先で触知するほど極めて鋭敏な触覚を持っています。この感覚を生かし、鍼灸のツボを的確に捉えるだけでなく、健常者の医師でさえ触察が難しい乳がんなどの病変をはじめ、体表上から確認可能な内臓や消化管の形状異常なども察知し、必要に応じて患者様にお伝えした上で、専門医をご紹介するよう心がけています。
経営で苦労したこと、嬉しかったこと
井ノ口: 経営の面で苦労されたことはありますか?
南舘さん: 低料金でずっとやってきたので、体を酷使しながら多くの患者さんをこなす必要がありました。ですが、患者さんから紹介されたり、がんの早期発見に繋がったり、スポーツで結果を出した子どもたちが報告に来てくれるのは本当に嬉しいことです。

これからも地域と共に、健やかに
井ノ口: 今後の目標を教えてください。
南舘さん: もう70を超えましたので、無理せず健康を保ちながら続けていくことが目標です。県立高校の介護課で非常勤講師も25年続けています。若い世代と触れ合うことで元気をもらいながら、脊柱管狭窄症などの疾患に対しても、独自の針治療を研究中です。小さな規模でも、患者さんとのつながりを大切にしていきたいですね。

おわりに
今回は、「南治療院」の南舘邦士さんにお話を伺いました。
視覚障害というハンデを乗り越え、長年にわたり地域に寄り添ってきた南舘さん。特別な広告や派手な技術ではなく、人と人との信頼を大切にする姿勢が、多くの患者さんに愛されている理由だと感じました。お身体を気遣う方は、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。